犬がアトピー性皮膚炎を発症してしまった際、なんとしてもかゆみを抑えてあげたいですよね。
動物病院に行きたいのだけれど、いったい治療費がいくらぐらいかかるのか…と心配になったことはありませんか?
今回は、この犬がアトピー性皮膚炎にかかった時の治療の選択肢や、それぞれの治療費についてお伝えします。
いったん皮膚病にかかってしまうと、完治はなかなか難しく、長期戦になりがちです。
■アトピー性皮膚炎とは■
アトピー性皮膚炎はとても多い皮膚病で、犬全体の10%はアトピー性皮膚炎があるとまで言われています。
アトピー性皮膚炎とはどのように発症してしまうのでしょうか。
主な原因は2つです。
1、皮膚が本来持っている外部刺激から身を守るバリア機能が低下する
2、アレルギーの原因となるアレルゲンが皮膚や呼吸を通じて体内に入る
皮膚のバリア機能が低下すると、水分蒸発が進んでしまい、皮膚がカサカサに乾いてしまいます。
そうすると、外部の異物の侵入を妨げる機能も働かず、どんどん体の中に入って行ってしまいます。
そのため、皮膚に炎症を起こしてアトピー性皮膚炎になってしまいます。
アレルギーが原因となる場合もあり、そのアレルゲンは犬によって様々です。
特に多い物として、ハウスダスト,花粉,ダニ,真菌,化学薬品などがあげられます。
こちらもアレルゲンに過剰に反応するために、アトピー性皮膚炎をおこします。
どちらもすべて解決する事が困難なため、総合的に管理していくことが重要です。
■アトピー性皮膚炎の症状■
犬のアトピー性皮膚炎の症状は、とてもかゆみが強く、皮膚が赤くただれて、かきすぎるために毛が抜けてしまいます。
皮膚のバリア機能が失われるので、細菌などが感染してしまう2次感染も起こりえます。
かゆみの他にも、皮膚の乾燥、ただれや膿皮症、慢性的な外耳炎・結膜炎があげられます。
犬のアトピー性皮膚炎がよく出やすい部分として、
・指の間
・目の周辺
・口の周り
・耳
・わきの下
・内また
・下腹部
・肛門周辺
・手首や足首
などがあげられます。
最初の頃は季節限定で症状が出ていたりするのですが、徐々に期間が長くなっていき、最終的には1年中症状がでる通年性になってしまうのがよくあるパターンです。
■アトピー性皮膚炎の治療の選択肢■
アトピー性皮膚炎にかかってしまった場合、犬への治療の選択肢は主に5つです。
1、ステロイド
2、抗ヒスタミン剤
3、減感作療法
4、免疫抑制剤
5、インターフェロン
では、1つずつ見て行きましょう。
1、ステロイドを使用
もともと身体の副腎と呼ばれる臓器の一部から産生されるホルモンで、「炎症を抑える,免疫を抑える」などの作用があるため、治療薬として頻繁に使用されます。
薬の名称としては「プレドニゾロン錠」が多く使用されます。
副作用が多い事はご存知の通りでしょう。
・食欲が増す
・多飲多尿
・胃腸障害
・感染症(傷口が化膿しやすい)
・肥満
・筋力の低下
・皮膚が薄くなる
・胃・十二指腸潰瘍
・肝障害
・糖尿病
・副腎の機能低下…
などがあげられます。
また、急に薬をやめてしまうとアジソン病にかかり、最悪の場合は命を落とします。
しかし、ステロイド剤を使用するメリットもあります。
それが
・効果が早い
・ほぼ間違いなく効く
・安い
飲み薬で即効性があり、ほとんどすべての動物に効果が期待できる薬はステロイドが一番有名ですし、経済的にも安価で済む場合が多いです。
2、抗ヒスタミン剤
人用の花粉症を抑える薬の名称として聞かれた方も多いのではないでしょうか。
抗ヒスタミン剤は、アレルギーの症状を出す代表的な物質のヒスタミンが体内で作用しないようにブロックしてくれるお薬です。
この薬は治すものではなく、症状を抑える薬です。
メリットとして、犬では抗ヒスタミン薬の副作用がほとんどありません。
また、他の薬に比較して比較的安くすみます。
デメリットとして、有効率が低いことがあげられます。
約30%の犬にしか効果がありませんので、効けばラッキーのような薬です。
3、減感作療法
減感作療法とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を特定し、それを体内に少しずつ注射していく治療法です。
体内に少しずつ入れる事で、アレルゲンに体を慣れさせ、過剰なアレルギー反応を起こさない体質に変えていくというものです。
アトピー性皮膚炎の治療はほとんどが症状を抑える薬ですが、この減感作療法だけが唯一体質を改善していく方法です。
メリットとしては、体質を変えるために、一定期間の治療後は全く治療が必要にならない犬もいます。
デメリットとしては、アレルゲンを特定する検査が必要です。血液検査や皮内反応検査という特殊な検査を行う必要があるため、時間も労力もかかります。
また、治療開始直後は体内にアレルゲンを入れるという作業を頻繁に注射で行わなければならないので手間がかかります。
効果が出たか判定できるまで2~3ヶ月必要とし、症状が出てしまってもかゆみを止めることはできません。
4、免疫抑制剤
免疫は、外界から身体を守る大切な機能です。
しかし、アレルギーでは、その免疫機能が働かなくても良いものにまで過剰に反応をして症状を出してしまいます。
そこで免疫抑制剤によって、体の過剰な免疫反応を抑制する事によってアレルギー反応を抑えます。
免疫を抑えすぎると外部の病原菌に対する抵抗力も低下してしまうので、皮膚炎には低用量で使用します。
商品名が「アトピカ」という、シクロスポリン剤です。
メリットとしては、ステロイドを使用せずにアトピーの症状を緩和できることです。
この薬自体の副作用もあまりありません。
有効率は70%と比較的高くなっています。
デメリットとしては、この薬は比較的高価だという事です。
即効性があるものではなく、効果があると判定できるまでに約1か月かかります。
5、インターフェロン製剤
このインターフェロン製剤は、アレルギーが発症する原因が体内の免疫物質のバランス(サイトカインバランス)を調整することで、アトピーの症状を緩和させます。
よって皮膚の炎症に直接作用するのではなく、より体質改善に近い治療になります。
メリットとして、この薬自体の副作用があまりありません。
また、症状を抑える薬ではありませんので、より根本的解決に近い治療が期待できます。
有効率は70%と比較的高くなっています。
デメリットとして、このインターフェロン製剤が注射薬という事です。
週3回の投与が必要で、有効かどうかの判定も1か月かかります。
薬自体も比較的高価です。
治療の選択肢5つと、有効率,効果までの時間,副作用,費用についてまとめました。
薬・治療の名称 有効率 効果までの時間 副作用 費用
ステロイド ほぼ100% 早い あり 安い
抗ヒスタミン剤 30%以下 早い ほとんどない 安い
減感作療法 約80% 遅い アレルギー反応 高い
免疫抑制剤 約70% 遅い 少ない 高い
インターフェロン 約70% 遅い 少ない 高い
どの治療を選択するかは、動物病院の先生と相談して決めて下さいね。
また、上記の薬・治療と並行して行うべきであるのが、シャンプーや保湿のスキンケアです。
薬ではなく、皮膚のコンディションを保つため,体についたアレルゲンの除去を行うことが目的です。
皮膚が乾燥するだけでかゆみが出てくるのは、人間にも共通しています。
皮膚を乾燥から守る保湿をしてあげる事で、かゆみの軽減が期待できます。
アトピー性皮膚炎のシャンプーは、刺激が少ないことと保湿を重視したものを選ぶ必要があります。
また、アトピー性皮膚炎からの2次的な感染性皮膚炎を起こしている場合、その感染性皮膚炎の治療用の殺菌性シャンプーを使用してから、その後にアトピー性皮膚炎のシャンプーをします。
シャンプーの後は必ずコンディショナーを使用し、保湿を心がけます。
■アトピー性皮膚炎の治療費■
アトピー性皮膚炎は、表面的にはよくなったように見えても、薬をやめるとすぐに再発してしまたり、定期的にシャンプーをしにトリミングが必要になったりと、飼い主の負担が大きい病気です。
治療費がいくらだとは明言できないのが現状です。
犬の症状の進行具合や動物病院の値段設定によって様々です。
また、犬の保険加入も任意ですので、保険に入っていなければ100%自己負担になります。
アトピー性皮膚炎の診察で動物病院に行った際、費用が掛かる項目を以下にあげておきます。
・診察料(初診,再診,時間外診察料,休日診察料)
・処置料(点滴,注射,耳掃除)
・検査料(血液検査,皮膚検査)
・薬代
などが考えられます。
アトピー性皮膚炎は長い治療になりますので、もし料金の事、治療の事で少しでも疑問があれば動物病院の先生やスタッフに聞いて下さいね。